力学整体ダイアローグ【対話・対談】
このページのコンテンツは、力学整体に関する会話の内容が質問者による質問とその回答というダイアローグ(対話・対談)形式になっています。
力学整体を理解するための最初の一歩となるページなのでしっかりとお読みいただくようお願いいたします。
大部分の人は、体内で筋肉の収縮が起きている
聞き手 施術(矯正治療)の時間は、どれくらいかかりますか?
トーベン 初回と2回目以降とでは時間が異なります。初めての場合は、入会申込書に記入していただいて、理論の説明とか検査をしまして、それから施術(矯正治療)を始めます。初回は何も分かりませんから力学整体の施術(矯正治療)はどいうことをするのかという体験治療として受けていただいているだけですので、約1時間半かかります。2回目以降は、施術(矯正治療)だけの時間ですと45分くらいです。それに、体癖修正運動の時間がプラスされます。体癖修正運動の時間は個人差がありますのでどれくらい行うかによって時間は変わってきます。あくまでも標準時間ですが20~30分くらいは行う方が多いので全体の施術(矯正治療)の時間は最低でも65分~75分くらいになるでしょうか。しかし、来所されて日が浅い入門期の会員さんの場合は、体癖修正運動をそれほど多くの回数は行いません。ですので施術(矯正治療)の時間はもう少し短くなります。また、2回目からは本格的に自己整体のエクササイズを学習していくことになります。入門期の会員さんはその指導と練習の時間がプラスされます。自己整体のエクササイズは1度に覚えることはできません。それで、自己整体の中から重要性の高いものから段階的にエクササイズを十数回に分けて指導しています。
聞き手 それでは、先生が患者さんにかける時間は30分くらいですか?
トーベン いいえ、違います。わたしがやる股関節操法は、2~3分くらいです。
聞き手 たった2~3分で矯正ができるのですか?
トーベン 確かに、そのような短い時間で本当に施術ができるのかと疑問を持たれるかと思います。患者さんの一般的な心理としては、時間をかけて施術をしてもらったほうが、何だか効くような気がしますから・・・。しかし、治療の世界では、必ずしも時間をかければよいというわけではないのです。もちろん、短ければ短いほどよいというものでもありません(注:その本当の理由については、治療の本質に関わる問題を含んでいて、簡単に説明ができないために、別の個所で説明します)。先ほど申し上げましたように、わたしが股関節操法で施術するのは2~3分でも、実際には検査と股関節調整法も施術しますので私が行う施術は5分くらいかかります。また、その他の体縮修正法や体縮調整法、休憩、上部体縮調整法などの施術(矯正治療)を実施していますので全部で45分くらいの時間はかかっているわけです。その上に、体癖修整運動が時間がプラスされるというわけです。実際は常連の会員さんたちは90分くらいになる方が多いようです。
聞き手 先生は、この力学整体をお考えなる前には、礒谷療法(礒谷式力学療法)から出発されたわけですか?
トーベン そうです。最初は、礒谷療法(礒谷式力学療法)からやっていました。ところが、礒谷療法(礒谷式力学療法)を始めてから、いろいろな問題がわかってきまして、それらの問題は、従来の礒谷療法(礒谷式力学療法)だけでは説明がつかなかったのです。それから、ずっと理解できない状態のまま疑問として持ってたわけでして、何とか解決したいと研究をやりました。そうして、礒谷療法(礒谷式力学療法)の理論を乗り越える理論を考えついたのです。私の話を聞いた他の礒谷療法(礒谷式力学療法)の先生方が、従来の礒谷療法(礒谷式力学療法)の考え方を旧理論と呼んで、力学整体の考え方を新理論と呼ぶようになったというわけです。力学整体の理論では、礒谷療法(礒谷式力学療法)では説明のつかなかったこともすっきりと説明がつき、礒谷療法(礒谷式力学療法)では対応できなかったような場合でも対応ができるようになりました。さらに、具体的な検査法とか施術法までもが変わってきます。そうして、わたしたちが扱う病気や症状の本態がわかるようになりました。
聞き手 先生の力学整体の場合は、神経と筋肉を中心にされているということですが、背骨をいじるのですか?
トーベン いいえ、背骨はいじりません。
聞き手 それでは、骨盤をいじるのでしょうか?
トーベン そうではありません。 昔から、骨盤のゆがみを治すと、背骨のゆがみも治るという理論はありますが、力学整体の場合は違います。骨盤をゆがめる原因というものがありまして、さらにもう一段階も二段階も、その根本の原因にさかのぼるわけです。
聞き手 それは何でしょうか?
トーベン 一言でいいますと、筋肉の自律収縮(短縮・拘縮・硬縮)です。全身の筋肉が異常な収縮を起こして、硬くなるのです。筋肉が異常収縮を起こすということには、脚の骨が大きく関与しているのです。
聞き手 その筋肉の異常な収縮というのは、誰にでもあるものなのでしょうか?
トーベン 私の経験では、90パーセント以上の人には、この筋肉の自律収縮(短縮・拘縮・硬縮)があります。その筋肉の自律収縮(短縮・拘縮・硬縮)というのは、従来は単純に「筋肉のこり」の状態として捉えられていますが、筋肉自体に問題があるのとは違うのです。
聞き手 と言いますと?
トーベン 脚の骨の中でも、特に大腿骨という太ももの骨は、股関節にはまり込むところで約130度の角度で曲がっています。ですから、1本の棒のように真っ直ぐではないんです。そして、股関節というのは、関節の種類の中でも、全動関節といいまして、あらゆる角度に動ける関節となっています。その関係で、大腿骨の角度が股関節部で外側へねじれたり、開いたりすると、大腿部を起点としてその周辺の筋肉から収縮を起こし始めます。逆に、これが内側にねじれたり、閉じたりすると、やはり収縮を起こします。これを発見したのです。これが、力学整体の根本理論なのです。
体内の筋肉の収縮がいろろな障害を起こす
聞き手 しかし、それはどういうことが原因で、筋肉が収縮したりするのでしょうか?
トーベン それはですね、わたしたちが股を開いたりしますと、股関節で大腿骨が外へ向きますけど、筋肉のほうも外なら外側に向いた状態で縮んでしまい、骨も筋肉も元に戻らないから、そのまま股関節の角度が固定してしまうのです。そこで、角度が固定してしまうと、他の骨や筋肉などに影響するわけなんです。
聞き手 どこの筋肉が縮んでいるかを素人が見分ける方法というのはあるのでしょうか?
トーベン はい、あります。筋肉というのは骨とつながっていますから、筋肉がある程度以上縮むと、骨を引っ張るんですね。ですから、必ず体形のゆがみととか姿勢の悪さとなってあれわれます。それから、筋肉が縮んで伸びにくくなるわけですから、関節の動きが悪くなるので、動きにくい動作や姿勢はしなくなって、動きやすい動作や姿勢をするようになってきます。それは日常の動作や姿勢の癖となってあらわれます。
聞き手 私の場合はどうでしょうか?
トーベン あなたの場合は、右肩が下がって、首が左側に傾いていますよね。ですから、どちらかというと身体の右側の筋肉が短縮しているのです。
聞き手 ああ、そうなんですか。確かに私の場合は、右の肩がこりやすいし、右の腰が痛くなったり、右脚に痛みが出やすいですね。
トーベン 体の中で筋肉が縮んで元に戻らなくなると、その部分に近いところで神経や血管を圧迫して、神経障害や血行障害を起こす原因になるのです。
聞き手 なるほど。筋肉の収縮が体形のゆがみとなってあらわれ、体や関節の動きの悪さをもたらし、それが神経や血管に影響するということはわかりました。それでは、内臓なんかにも非常に影響を及ぼすわけですか?
トーベン そうですね。その影響は、2つにわかれる考えられます。たえば、左側の筋肉が短縮していると、背骨は右側に曲がりますよね。その場合は、左半身の内臓の調子がおかしくなります。たとえば、心臓とか膵臓(膵尾)などですね。また、頭痛や肩こり、腰痛などは左半身に出やすいですね。
聞き手 私は右肩が下がっておしゃってましたね。だから、右側が短縮していると・・・。そうすると、私のような場合は、どうなのでしょう?
トーベン ええ、右側の筋肉が短縮している人というのは、反対に背骨が左側に曲がるわけです。そうしますと、今度は右半身の内臓の調子がおかしくなってきます。たとえば、胃(幽門部)、十二指腸、肝臓、虫垂などです。それと、頭痛、肩こり、腰痛は右半身に出てきます。
聞き手 体内で筋肉が縮んで、右側が縮んでいるか、左側が縮んでいるかによって、どうしてそういう病気がおこるのでしょうか?統計的にですか?
トーベン いいえ、統計的に出してるわけではないのです。ある程度、理論的に判明することなのです。たとえば、右側の短縮が起こっている場合は、背骨が左側に曲がります。そうすると、短縮した側で筋肉が内臓や神経や血管を圧迫するわけなんですね。ですから、圧迫された器官というのは、正常に機能しなくなって働きが悪くなってくるんですね。それだけでなく、背骨も曲がるわけですから、その曲がったところで神経が痛みますよね。神経が内臓に命令をしてその働きを支配していますから、痛んだ神経の末梢にあたる臓器が、神経障害による機能障害を起こすということもあると考えられるわけです。その結果として、いわゆる内科的な疾患が生じてくることもあるというわけです。
礒谷式が力学整体の原点
聞き手 そういうことは、どういうきっかけでわかったのですか?
トーベン 私は、はじめは礒谷療法師として研究を始めたのです。礒谷療法(礒谷式力学療法)では、いろいろな病気の原因は、左右の脚に長短があるものと決められていました。ところが、それ以外にも原因があったのです。それが、力学整体の理論のきっかけになりました。
聞き手 というと?
トーベン 礒谷療法(礒谷式力学療法)では、股が外側にねじれて開くと脚が長くなり、反対に、股が内側にねじれると脚が短くなるということを言っているのですが、実際に患者さんを見ていきますと、必ずしもそうではない人がいるわけです。あるいは、脚の診断法というのがあるのですが、その診断法で調べてみますと、理論通りの診断結果が得られないことがあって、その判断に迷うわけです。まだまだ、そういう例はありますが、そういうことがあっても、礒谷療法(礒谷式力学療法)では、そういう人は例外なんだというふうに考えるのですよ。ところが、その例外が多かったりするわけです。
聞き手 そうなんですか!
トーベン 確かに礒谷療法(礒谷式力学療法)というのは、かなり理論がすっきりとまとまっており、それに当てはまる人も多いことは多いのですが、一方で、そうではない人もいるわけです。
聞き手 そうすると、理論に当てはまる人は納得するけれども、当てはまらない人は納得しないということになりませんか?
トーベン その通りです。たとえば、左右の脚に違いがある人が、礒谷療法(礒谷式力学療法)というのは、脚の長短を直す矯正だと思って施術を受けたのに、脚の長短差が直らなかったら、どう思いますか?
聞き手 そうはもう、礒谷療法(礒谷式力学療法)の理論というのは、嘘だと思うでしょうね。
トーベン その人は、股が外へねじれて開いているほうが短くて、股が内へねじれて閉じている場合と考えてください。そうすると、脚が長い短いということを重視するなら、股が外へねじれて開いているほうをさらに外へねじって開く矯正をし、股が内にねじれて閉じているほうをさらに内へねじって閉じる矯正をすることになります。
聞き手 その矯正というのは、おかしくありませんか!だって、もっと股のねじれとか開きがひどくなるのではないですか?それじゃ、かえっておかしなことになりませんか?
トーベン さすがに施術する側は、脚の長短を直す方向での矯正よりも、股の関節の角度を矯正するほうを選択します。しかし、それだと簡単には脚の長短は直らない。
聞き手 それじゃ、その人は納得しないでしょうね。そんな事情は、なかなかわからないでしょうしね。
トーベン ええ、おっしゃる通りです。ですから、礒谷式の矯正は、股関節の角度を最も重視しているのが実態で、脚の長短ではないのです。股関節の角度を整復すると、脚の長短が直ることもあるというのが本当のところなのです。実際に、多くの患者さんを見ていると、脚の長短差がほとんどないという人も多いのです。しかし、股関節部でのねじれや開きと筋肉の自律収縮(短縮・拘縮・硬縮)はあるのです。
聞き手 そうなんですか!それでは、脚の長短差がない人は、礒谷式の矯正というものは自分とは関係ないと思いますね。
トーベン ところが、研究の発端が脚の長短にあるので、どうしても脚の長短にこだわっているんですね。それに、患者さんへの説明としては、わかりやすいんですよ。股関節の角度がどうのこうのと言うよりも、脚が長い短いと言うほうがイメージしやすいですからね。
聞き手 そうすると、先生は、脚の長短よりも、股関節の角度を調整することに重点を置いているということですか?
トーベン はい。力学整体では、脚の長短よりも、股関節の角度を最も重視しています。実は、それだけではないのですが・・・。とにかく、力学整体では、その人に合った股関節の角度に矯正をしているのだと考えていただいて、間違いはありません。また、礒谷式では、脚の長短を基準にして、左脚が長い場合の症状と右脚の長い場合の症状が分類されていますが、それにも問題があるのです。
聞き手 と言いますと?
トーベン つまりですね、この分類が、かなり診断上で重視されているのです。時には、股関節部の角度よりも重視されることが多いのです。たとえば、左脚が長い場合の症状を持っていると、左脚が長い場合の矯正をするというわけです。ところが、左脚が長い場合の症状を持っているのに、実は、右脚が開いてねじれていて、本当は反対にそちらを矯正しなければいけないということがあるのです。
聞き手 それでは、矯正がまったく反対になりますね。
トーベン それだけではないのです。この脚の長短と症状による分類は、統計上から分類されているので、かなり当てはまる人もいらっしゃるのです。この当てはまる人が多いというのが、また問題なんですよ。そうするとですね、この分類は正しいというふうに考えてしまうのです。ですから、たとえば、左脚が長い症状を持っている人がいたとすると、礒谷式の理論だと左股を外側に開いて矯正することができなくなるんです。というのも、礒谷式の理論だと、左股を外側に開いたら、症状が悪化すると考えるからです。
聞き手 分類に反しても、反対側に矯正をしたほうがいいという場合があるということですね。
トーベン 脚の長短と症状の対応関係による分類というのは、かなり当たっている部分があるからこそ、問題なんですね。そのため、その分類に反して矯正ができなくなってしまうのです。ですから、礒谷式では、股を外へ開くと、こうした症状が起こると考えるために、どうしても矯正は内側へ内側へとする結果となってしまっているのです。そのために、矯正が内側へ向け過ぎになってしまいがちです。礒谷式の理論では、外側へ矯正するのは、症状が悪化すると考えますからね。そのために、かえってその人に合った角度から外れていってしまう矯正をしてしまうことになるのです。
聞き手 どうして、そんなことになってしまうのでしょうか?原因は、何なのですか?
トーベン それは、やはり脚の長短と症状の対応関係の分類が間違っているからです。結局、統計上の分類にしか過ぎないのです。力学整体では、統計上の分類ではなく、因果関係による症状との対応関係を考えて矯正をしますから、礒谷式の理論とは違った結果になることもあるわけです。
聞き手 それが、さっきおっしゃってた筋肉の自律収縮(短縮・拘縮・硬縮)による症状のお話だったんですね。
トーベン そうです。礒谷療法(礒谷式力学療法)は、骨格を中心にして考えているのです。もちろん筋肉についてもある程度は考慮しているのですが、やはり理論の中心になっているのは骨なんですね。この骨だけで考えると、非常に考えやすいし、理論もわかりやすいものになり、素人受けはします。
聞き手 だけど、全部ではないと・・・。そういうことなんですね。
トーベン ええ、まあ、そうです。骨だけで考えているから、いろいろな問題が起きているのです。
全身のコリこそがすべての元凶
聞き手 お話を聞いてますと、まず礒谷療法(礒谷式力学療法)の理論について、ある程度の理解をしておかないと、なかなか難しい話ということになりますね。
トーベン それが問題なのです。なかなか、みなさんに理解していただけるように説明をするというのができなくて困っています。
聞き手 みなさんに理解していたでけるように、筋肉の収縮について、もう少しお話を伺いたいのですが・・・。
トーベン そうですね・・・。礒谷療法師としてやっていた頃に、ある反応が患者さんに出ることがあったんです。それが何なのか礒谷療法(礒谷式力学療法)では説明がつかないというか、理解できなかったのです。
聞き手 そのある反応とは何ですか?
トーベン それは、ズバリ、筋肉の収縮です。施術を行なっていく過程で、ごく稀なケースなんですが、体の中で筋肉の緊張状態がはっきりと変化しているのが分かる人がいたのです。先ほども説明しましたように、礒谷療法(礒谷式力学療法)というのは、骨を中心にして理論が組み立てられていますから、当初は、その現象も骨を中心に考えようとしたのですが、どうもうまく説明がつかないんです。ですから、それらの現象にも、礒谷療法(礒谷式力学療法)の理論では、十分に対応できないわけです。
聞き手 その筋肉の収縮というのは、礒谷療法(礒谷式力学療法)の理論では、解明されていなかったということなんですね。
トーベン ええ、まあ、その通りです。つまり、礒谷療法(礒谷式力学療法)の理論とは、まったく別の原理が働いていたということです。
聞き手 そこを解明したのが、力学整体だというわけなんですね。
トーベン そういうことです。股関節部を中心とした筋肉系と、全身の筋肉系とがつながっていて、独自の原理によって筋肉の収縮が全身に波及していたのです。そうして、新しい視点から、もう一度、礒谷療法(礒谷式力学療法)を捉え直したわけです。
聞き手 それが、力学整体の始まりになったわけですね。
トーベン これまでは、筋肉の収縮と呼んできましたが、これを分かりやすい言葉で、「こり(凝り・コリ)」と呼んでいます。こり(凝り・コリ)は、肩こりなどのように、「こり感」を感じているところにあるのではなく、全身に起こっているのです。そして、こり(凝り・コリ)の程度がひどくなってくると、こり(凝り・コリ)はいろいろな症状となってあらわれてくるのです。
聞き手 こり(凝り・コリ)というのは、肩こりだけではなかったのですか!
トーベン そうです。こり(凝り・コリ)は全身にあります。こり(凝り・コリ)の程度が軽いと、何も症状としてあらわれませんが、ひどくなると、こり感、重い、だるい、張る、つる、痛み、シビレといった症状となってあらわれてくるのです。ですから、いろいろな症状の原因にこり(凝り・コリ)があるわけですし、先ほども申し上げたように、こり(凝り・コリ)は骨を引っ張って体形をゆがめ、背骨を曲げることになりますし、関節の動きを制限して体の動きを悪くしますし、体の中の臓器を圧迫したりするわけです。
聞き手 なるほど、こり(凝り・コリ)の問題は深刻ですね。
トーベン そこで、このこり(凝り・コリ)の問題に取り組んできたわけです。そして、この全身のこり(凝り・コリ)である「体縮」を解消することによって、いろいろな症状の大本の原因となっている部分を除去することができ、その結果として、自然治癒力が働くようになり健康体になる、と考えるようになったのです。
聞き手 その方法が、力学整体であるということですね。
トーベン このこり(凝り・コリ)の問題については、他の治療法などでも考えられてはいるのですが、そのほとんどが筋肉の問題として考えられているのですね。しかし、力学整体では、こり(凝り・コリ)は筋肉だけの問題ではなく、骨格系と神経系とが関係していて、さらには重力が大きく関与していると考えているのです。
聞き手 つまり、力学整体は、こり(凝り・コリ)の問題と股関節の転位とを結びつけて、そこには重力と神経系が関与しているということですね。
トーベン まあ、そういうことです。
生活習慣動作の矯正もたいせつ
聞き手 くわしくお話をしていただいて、力学整体というものがかなり分かってきましたが、これを先生より先に考えた人はいなかったのですか?
トーベン いいえ、いらっしゃいました。しかし、それぞれが個々の問題として扱われており、それらはまったく別々のこととして論じられていたのです。私自身も、今お話ししたような内容はずっと以前から知ってはいたのですが、やはり自分の中では結びつかなかったのです。それらが、結びついてまとまるには、何年もかかりました。
聞き手 それを先生が結びつけて、まとめられたということですね。
トーベン ええ、そうです。何年も考え続けていたので、ある日、偶然、発見したわけです。そこのところが、まったくの独創なのです。
聞き手 1+1が2になったというより、1+1が2にも3にもなったという感じでしょうか?
トーベン そういう感じかもしれませんね。実際にも、礒谷式とは異なる観点から、検査を行って判定し、施術を行なっていますから・・・。しかし、やはり礒谷式というのは、素晴らしい療法だと思います。
聞き手 ところで、力学整体では、施術をしていただいたら、元に戻るということはありませんか?
トーベン それには、個人差があります。というのも、筋肉の収縮というのは、癖になってるんですね。筋肉が収縮した状態で固まっていると言うのか・・・。ですから、この癖の程度によって、元に戻るかどうかということが決まってしまうのです。悪い癖が直らないと、また元に戻ってしまう可能性はそれだけ大きくなるということになります。ですから、力学整体では、この身体の癖を「体癖」と呼んで、自分で自分の健康を管理する方法を全部指導しています。
聞き手 その方法というのは?
トーベン 力学整体では、自己整体と呼んでいる自己対策のエクササイズ方法を覚えていただいて、それを家庭でも実行していただいています。
聞き手 そのエクササイズには、どのようなやり方があるのですか?
トーベン 大きく分けると、2つに分類できます。1つは、家庭で行なう簡単な体操や運動があります。もう1つは、生活習慣動作である、日常の姿勢とか動作があります。
聞き手 なるほど。ただ施術をやっていただくだけでなく、自宅で自分でできる整体法(整体術)や日常の生活習慣動作なども指導してくださるのですね。これは、患者さん側にとって、ためになることだし、本当にありがたいですね。しかし、そうした指導もじゃまくさがって、やっている人がいらっしゃいますか?
トーベン ええ、いらっしゃいますよ。特に、健康を害したまま人生を送るか、それとも元気で明るい人生を送るかという、瀬戸際に立たされている人は、みなさん一生懸命にやられています。
聞き手 それは、そうですが・・・。
トーベン ご心配はわかります。つまり、エクササイズの全部を完璧にやらないといけないのかということですよね。みなさんは、そこの点をよく誤解されるんです。このエクササイズを100パーセント実行しなければ、必ずしもよくならないというわけではないのです。はじめから、いきなり全部を覚えられて、できる人なんていません。それに、エクササイズの全部を100パーセント守れる人はいません。ですから、自分は、指導を受けたエクササイズの全部を100パーセントなんてできなから、力学整体はできないなんて考える必要はないんです。まずは、できそうなものからやればいいんです。
聞き手 それを聞いて、安心しました。私などは、いい加減なところがありますから・・・。
トーベン 私も、そうですよ。むしろ、エクササイズの全部を100パーセントできなからダメだなんて考えて止めてしまわないで、自分ができる範囲でやればいいんですよ。同じ人でも、具合の悪い時には一生懸命にやるし、調子がよくなると減らしてやってらっしゃいますよ。
聞き手 それで、いいんですか?
トーベン それで、いいんです。患者さんの中には、難病や難症のためにずっと矯正を続なければならいない人もいらっしゃいます。あるいは、健康のために続けている人もいます。そういう人にとって、一番大事なことは、途中で止めないということなんです。長く続けるには、ちょっといい加減なくらいがちょうどいいのです。
聞き手 まあ、マラソンみたいなものなんですね。全力疾走してたら、途中でへたばってしまい棄権せざるを得なくなるということですね。だから、マイペースでいったほうがいいんですね。それを伺って、安心しましたよ。これで、私も健康法や養生法として長く続けられそうです。
トーベン 指導も、そういうことを考えて1度に自己整体のエクササイズの全部を教えるなんてしていません。消化不良を起こしてしまいますからね。ですから、段階的に指導するようにしています。
聞き手 今日は、貴重なお話しをありがとうございました。
トーベン いえ、いえ、こちらこそ勉強になりました。今日は、どうもありがとうございました。
聞き手 それでは、今日の対談をおわりにしたいと思います。