うつ病(鬱病、欝病)関連本
- 夏苅 郁子 (著), 小池 梨花 (著), 野村 総一郎 (著), David D. Burns (著), & 4 その他 『いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法』(星和書店、増補改訂第2版)
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おすすめ度:★★★★★
本書は、発売以来、英語版で300万部以上売れた「うつ病」のバイブルと言われている認知療法の解説書です。
うつ病の患者さん向けに認知療法という新しい精神療法・心理療法を紹介しています。
ただし、本書には認知療法の解説だけでなく、薬の話や脳内のメカニズムなど薬物療法に関しても説明があります。
本書の中で認知療法と薬物療法に関する頁はそれぞれ約半分ずつになっています。
そいういう意味で、本書は認知療法の本だけれども薬物療法についてもかなりの分量を割いて説明がなされている「うつ病」に関する書籍になっています。
私にはうつ病の患者さんが自分で認知療法を学習する独学についてはどうなのか疑問に思うところがありました。
しかし、本書によれば、うつ病は自助が回復の鍵になり得ること、優れた自助本を読む「読書療法(読書治療)」はうつ病に効果があるとともにうつ病の再発予防にも効果があるという調査結果が報告されています。
また、セラピストに対する調査では、自助本の中で本書がうつ病の患者さんに推薦する書の第一位に評価されたという結果も報告されています。
そのことからも、認知療法のことを知りたい、学びたいというのであるならば本書は外せません。
本書の認知療法の関する記述は認知療法をより深く理解できるような内容になっています。
認知療法の知見は何も精神疾患や精神障害のある患者さんだけでなく、普通の人にも役立つ内容があり大変参考になります。
人間である以上、認知にまったく歪みがない人というのはいないはずだからです。
ですから、一般の方にも認知療法が記述されている本書の前半部分だけでも読んでおくことをおすすめしたい。
読書に慣れていない方には認知療法の本格的な解説をしている本書の前半部分を読むだけでも大変でしょうが、日本語の文章としてちゃんと理解できるようにきちんと翻訳されているので読んでわからないということはないはずです。
薬物療法の説明がある本書の後半部分は必ずしも全員の方が読む必要はないでしょう。
読む必要があるとすれば、医療従事者及び医療関係者かうつ病の薬を処方されている患者さんご本人ということになります。
あるいは、患者さんのご家族か親しい間柄にある友人くらいになるでしょうか。
もちろん、うつ病の薬物療法に興味や関心のある方も読まれると良いでしょう。
患者さん本人は自分が処方されている薬の個所だけでも読めば参考になるはずです。
薬物療法に関する記述は、薬学や薬に関する知識がない方には薬の一般名や商品名の多さに覚えられないと混乱してしまうかもしれません。
しかし、一般の方が薬の作用や副作用などを知り、その捉え方や考え方、対処法などを理解するには非常にわかりやすい記述になっています。
薬のことを理解するのに非常に役立つ内容になっています。
薬物療法の本書の後半部分を読むのは薬に馴染みのない方には大変でしょうが、きっと薬の理解が深まるはずです。
一般の方が本書を一度読んだだけで認知療法を完全に理解するのは難しいかと思います。
ですから、本書は一度読んだだけにせず二度、三度を読み返すと良いでしょう。
本書は繰り返し読む価値がある内容が書かれているので決して損はしないはずです。
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- 谷沢 永一 (著) 『人間、「うつ」でも生きられる』(講談社)
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おすすめ度:★★★★
谷沢永一氏の本はこれまでにも何冊か読んだことがあるので、店頭でこの本のタイトルを見かけたた時はエッと思いました。
あの著名な日本近代文学専攻の書誌学者である谷沢永一氏が、うつの本を書かれたというのが奇異に思われたからです。
それで、ちょうどその頃、ひどいうつ状態の会員さんと接していた時期だったので、さっそく買って読んでみました。
この本を読んでみて、谷沢永一氏ご自身がうつで苦しんでいたことを初めて知りました。
そして、この本によって、生まれつき「うつ体質」の人がいるということを知りました。
まさに、谷沢永一氏がそうだったのです。
それによって、いかに谷沢永一氏が苦しんで来られたかということが本書には赤裸々に書かれてあります。
私にはそのことが驚きでした。
人間は、外側から見ているだけでは分からないものだと思いました。
うつに関する知識はとても重要だと思います。
いつ自分がそうなるか分かりませんし、また自分がそうならなくても周囲の身近な人がそうなるかもしれません。
だから、あらかじめうつに関する知識を持ち合わせているのと、そうでないのとでは、その受け止め方に違いが出て来てしまうと思います。
そういう意味で、本書はうつを知るためのよき入り口になると思います。
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- 冨高 辰一郎 (著) 『なぜうつ病の人が増えたのか』(幻冬舎ルネッサンス、幻冬舎ルネッサンス新書)
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おすすめ度:★★★★★
本書は現役精神科医である冨高 辰一郎(とみたか しんいちろう)氏がうつ病患者激増の原因を客観的データで読み解いた他に類を見ない現代うつ病論です。
冨高辰一郎氏は、1999年から2005年までのたった6年間で、うつ病患者が2倍以上に激増した原因を精神科医としてになぜうつ病患者がここまで急速に増加したのかという疑問から調査することになります。
冨高辰一郎氏は、当初うつ病患者増加の原因は現代人を取り巻く社会環境の大きな変化にあるのではないかと予測します。
ところが、うつ病患者激増の原因を調べていくうちに驚くべき事実にぶち当たります。
それは、冨高辰一郎氏が「SSRI現象」と呼ぶ製薬会社の主導のもと行政と医師をも巻き込む経営戦略と経営戦術によるビジネスモデルにもとづく社会現象でした。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる新しい抗うつ薬の登場によって、薬価の高いSSRIを売ることで利益を上げる見込みを得られた製薬会社が積極的なマーケティング活動を行うことで、うつ病受診者を拡大させたというのです。
しかも、この「SSRI現象」は日本だけでなく、いち早くSSRIを導入した欧米においても日本に先行して同様の現象が起こっているというのです。
これは製薬会社がうつ病患者を作り出しているともいえる驚くべき衝撃の事実というほかありません。
製薬会社が官民を取り込んででうつ病の啓発活動を行うことで、一般人のうつ病に対する認知が進み、うつ病の疑いで心療内科や精神科を受診する敷居を低くしてきたというのです。
冨高辰一郎氏のよれば、日本の場合、医療機関を受診したうつ病患者の経過については、治療開始後3カ月以内に5割の人が回復しており、6カ月後には8割近くが回復しているといいます。
しかし、1年経っても回復しない患者も15パーセント程度いるといいます。
1年経っても回復しない患者の大部分は、2年経っても回復していないといいます。
次に、欧米の研究によれば、未受診のうつ病患者の経過については、中央値を調べると、治療を受けなかったうつ病患者の回復までの期間は3カ月で、治療を受けたうつ病患者の群は、総合診療医の場合で4.5カ月、精神科医の場合で6カ月が回復までの期間という結果だったといいます。
この結果は、軽症の場合は未受診になる傾向があり、重症の場合は精神科医を受診するという傾向を勘案すれば、必ずしも治療しないほうが早く回復するという結論までは導き出せないということです。
それでも、未受診のうつ病の患者の場合、経過が良好な患者が多いという事実は、うつは自然回復することも多いというのは正しい部分もあると冨高辰一郎氏は認めておられます。
また、冨高辰一郎氏のよれば、臨床試験では薬価の安い従来のTCA(三還系抗うつ薬)などの抗うつ薬と新薬であるSSRIには効果の差がほとんどないということです。
本書は、近年における短期間のうつ病患者の急速な激増の背後には、製薬会社による啓発活動があったということを明らかにした画期的な書であり、その存在意義は大きいといえます。
本書は、精神科医や心療内科医、臨床心理士などの専門家、一般科の医師や看護師などの医療従事者に向けられて書かれて専門書でありながら、一般の読者でも十分に理解できる内容になっています。
うつ病に関心のある人ならばぜひ一読すべき本であるといえます。
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- 鈴木 直人 (著) 『うつ病・自律神経失調症 治る人治らない人』(メタモル出版)
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おすすめ度:★★★★
整体・カイロプラクティックの施術を行っている健療施術院の院長である鈴木直人氏が一見畑違いとも思われる「うつ病と自律神経失調症」に関する書籍を出されたというので買っておいた本です。
健療施術院はうつ病・自律神経失調症専門の整体院ということで、一般整体療法、自律心体療法(自律神経専門療法)、カウンセリング(心理療法)などの施術メニューがあるようです。
鈴木直人氏の仕事柄、うつ病と自律神経失調症を身体の構造と関連づけた内容になっているのではと予想していたのですが、本書の内容はそれだけにとどまらず多岐にわたっていました。
本書の内容は、鈴木直人氏自身がうつ病及び自律神経失調症にかかってしまった体験をもとに、自分でうつ病と自律神経失調症を勉強した成果をまとめたものとなっています。
うつ病と自律神経失調症に関する内容は原因から対策まで非常に分かりやす説明されていて、私が予想していた以上に内容が良かったです。
うつ病や自律神経失調症の原因となるストレスを精神的ストレスと科学的ストレスと構造的ストテスと温度・湿度のストレスの4つに分類し、それぞれに応じた対策まで説明されています。
本書だけでうつ病と自律神経失調症のすべてをカバーできているわけではありませんが、うつ病と自律神経失調症に関する書籍としてはなかなかの良書ではないでしょうか。
うつ病や自律神経失調症にかかっている方なら読む価値はあると思います。
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- 溝口 徹 (著) 『「うつ」は食べ物が原因だった!』(青春出版社、青春新書INTELLIGENCE)
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おすすめ度:★★★★
本書は適切な食事やサプリメントによる栄養素によって病気の治療や健康の維持を図るオーソモレキュラー療法をもとに心のトラブル特に「うつ」に焦点を当ててその原因から治療法を紹介しています。
また、著者の溝口徹氏は、2003年に日本初の栄養療法専門クリニックである新宿溝口クリニックを開設し、栄養学的アプローチで精神疾患のほか多くの疾患の治療にあたっている人物です。
うつの治療といえば薬物療法(投薬治療)か心理療法(精神療法)の2つが主流となっていますが、栄養素による治療も新しい治療法として存在し得ることを認知させてくれる点において患者の治療法の選択肢を切り広げてくれる意義があります。
本書ではうつの主な原因として血糖の調節異常と脳内の神経伝達物質をつくっている栄養素の不足の2つをあげています。
血糖調節異常というのは血糖値が低くなったり、上がったり下がったりを繰り返したり、低い値で推移している場合などがあります。
血糖値に関しては血糖値が安定すると脳に十分なブドウ糖が供給されて精神的にも安定するというのです。
血糖値が安定しているとは、食事の後で血糖値はゆるやかに上がり、それからゆるやかに下がり、空腹時の血糖値より下がりすぎない状態のことを指しています。
血糖値が食後にゆるやかなカーブを描くようにするにはインスリンの分泌が少なくて済むような食生活をする必要があります。、糖質を減らし、GI値の低い食品を摂るその中でも、十二脳神経訓練と手足の運動と見返り美人のポーズの3つはイラスト入りでページ数を割いて紹介しています。
血糖値をコントロールするには、糖質を減らし、GI値の低い食品を摂るのが最適な手段となるといいます。
この点に関しては、糖質制限食や糖質制限ダイエットに近いです。
栄養素の不足に関しては、鉄欠乏、亜鉛欠乏、ビタミンB群欠乏、たんぱく質欠乏などの栄養欠損があげられています。
本書の後半ではうつにならない生活の仕方も紹介されています。
問題は、栄養療法におけるうつに対する効果になろうかと思います。
うつを対象にした栄養療法の有効性や治癒率に関して本書ではかなりの効果があるかのように書かれています。
この点に関しては本当にそれほどうつの治療効果が高いのだろうかと疑問を抱かざるを得ませんでした。
本書に書かれてあるような効果があるとすれば、うつ治療の主流として真っ先に受けるべき治療法となりそうだからです。
オーソモレキュラー療法によるうつ治療に関してはやはり効果に個人差があるのではないかと思われます。
したがって、患者としては選択肢の一つとして捉えておくべきなのではないでしょうか。
どういう方のどういう症状であればオーソモレキュラー療法が有効なのかもう少し対象を限定して明確したり、効果に関しては統計で明らかにする必要がありそうです。
もっとも、実際にはうつの患者さんの多くは薬物療法(投薬治療)や心理療法(精神療法)なども併用していてオーソモレキュラー療法だけを行っている方は少ないでしょうから、そうした患者さんから純粋にオーソモレキュラー療法による効果を抽出するのは難しいという面はあるかと思われます。。
その点を除けば、うつの人には、うつの症状には食事や栄養素が関係している場合があるのだと知見と視野を広めるのに本書は役立つでしょう。
ただ、うつの患者さんでオーソモレキュラー療法を希望してやってみたいという場合、本書だけで実行は難しいものと思います。
やはりオーソモレキュラー療法を行っている医師に診察・検査・指導を受ける必要があるのではないかと思いました。
その場合、オーソモレキュラー療法の治療は健康保険の対象にならないでしょうから、医療費やサプリメント代は健康保険が適用されず自己負担額は全額実費負担となることを注意する必要があるかと思われます。
本書はうつは食事や栄養素が関係している場合があるという切り口でうつを中心に心のトラブルを抱えている方を対象に書かれているわけですが、うつの人だけでなく一般人でも食事や栄養に関して役立つ部分が多く記述されているので食事や栄養に関心のある方なら参考になるかと思います。
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