統合失調症関連本
- 岡田 尊司 (著) 『統合失調症』(PHP研究所、PHP新書)
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おすすめ度:★★★★
随分前に「精神分裂病」の本を読んだきり、2002年に病名を「統合失調症」という名称に改名されてからも読んでいませんでした。
これは最初に読んだ本が精神分裂病のことが非常にわかりやすかったため、その後読む必要性を感じなかったこともあるかもしれません。
ところが、ウィリアム・グラッサーの『現実療法―精神医学への新しいアプローチ』(サイマル出版会、サイマル双書)を読んで統合失調症について選択理論の新しい見方を知ってから、にわかに統合失調症について関心が向くようになっていました。
また、身近な統合失調症の患者さんや過去に出会った統合失調症の患者さんたちについて理解をもう少し深めたいという気持ちに傾くようになりました。
また、最近の統合失調症をく取り巻く状況をも知りたいと思うようになりました。
その目的に最も適いそうなのが本書のようでしたので読んでみることにしたものです。
実際読んでみると、統合失調症の全般にわたって最新の情報が書かれてあって、る当初の目的を果たせるだけの内容でした。
以前読んだ本では単一の原理から明快に精神分裂病の原因と病状を説明していて非常にわかりやすかったのですが、本書はそうした明快さはないものの、統合失調症の特徴を総合的に理解できるようになっていました。
ただ、本書には統合失調症に関する専門的な内容も書かれてあり、一般書としてはちょっとレベルが高く、医療の素人や読書の習慣のない一般人が統合失調症を理解するのに本書を読むのは内容がちょっと難しいところがあるかなとも思えました。
逆に言えば、それだけ内容が深くて濃いということも言えるかと思います。
しっかり読めば統合失調症のことがよくわかるように記述されています。
本書で最も印象的だったのは、先進国の近代的な西洋精神医療よりも、病気を悪霊のせいにしたり、祈祷などを用いるシャーマンや呪術師による地域の土着療法のほうが効果があったという事実でした。
これは、医療と科学と人間を考えるうえで酌み取らなければならない問題が含まれていると思われました。
本書の全体を通じて感じたのは、著者である岡田尊司氏の統合失調症の患者さんへの温かい眼差しでした。
それは、統合失調症の患者さんをどのように理解し、どようように接すればいいのかという面に特に表れています。
統合失調症は100人に1人がかかる身近な疾患である以上、統合失調症の患者さんに関わる人は決して少なくないはず。
本書を読めば、無知や無理解による誤解からではなく、著者の岡田尊司氏のようなやさしい思いやりを持って統合失調症の患者さんに接することができるかもしれません。
それが著者である岡田尊司氏の願いでもあると思います。
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- 蟻塚 亮二 (著) 『統合失調症とのつきあい方―闘わないことのすすめ』(大月書店)
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おすすめ度:★★★★
統合失調症の本を見ていると、本書の説明に「現実世界の困難とぶつかる時、人は自己の破綻を回避するために幻聴その他の精神症状を発生させて自己を保存しようとする。つまり幻聴は生きていれば必ず発生するウンコのようなもの。」という文章が目に留まりました。
特に「現実世界の困難とぶつかる時、人は自己の破綻を回避するために幻聴その他の精神症状を発生させて自己を保存しようとする。」という一文は、ウイリアム・グラッサー博士の選択理論とリアリティセラピー(現実療法)に類似する考え方だと思いました。
日本の精神科医にも統合失調症に関して選択理論とリアリティセラピー(現実療法)と同じ様な考え方をしている人物がいるんだと興味を持ちました。
それで、著者の蟻塚 亮二(ありつか りょうじ)氏の考えをもう少し知りたいと思い、本書を読むことにしました。
本書は、蟻塚亮二氏が精神科医として日々の診療にあたる中で経験したことや多岐にわたって考察したことをまとめたメモのような内容になっています。
そのため、蟻塚亮二氏独自の価値観や見解が書かれていて大変興味深かったです。
特に、精神障害と精神症状の流動性や、心の「氷山モデル」における自分と幻聴・幻覚・妄想はどちらも心でつながっていてどちらも同じ自己なのだという見方などが印象的でした。
本書には、患者本人が統合失調症の症状とどのように付き合えば良いのかそのコツと秘訣が解説されています。
それは、たとえ統合失調症の症状があっても何とかやっていけるのだということを示してくれています。
それにしても、専門の精神科医というのは、ここまで患者さんのことを考えているのかと敬服させられるところ大でした。
しかも、蟻塚亮二氏は精神科医としてマニュアル化された診察室内での通り一遍の診療や治療だけでなく、患者さんやそのご家族と深く関わり合っているのには驚かされました。
精神科医が患者さんのためにここまでするのかという驚きがありました。
また、精神病患者の置かれている社会的状況とその問題についても教えられるところがありました。
本書を通して感じたのは、蟻塚亮二氏の患者に対する温かい思いやりです。
患者を何とか回復させて自立して生活できるようにしてあげたいという気持ちと統合失調症は決して不治の病などではなく治る希望が持てる病気なのだというメッセージが伝わってきました。
本書は患者本人だけでなく、家族や支援者などの関係者をはじめとして、医療従事者や専門家、一般読者にいたるまで参考になるところがあるはずです。
統合失調症の患者さんに対する理解が深まるはずです。
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