関節リウマチ関連本

自然形体療法創始者 山田 洋 (著) 『リウマチ、こうすれば治る!―完全無痛の自然形体療法』(かんぽうサービス、株式会社かんぽう)

リウマチ、こうすれば治る!―完全無痛の自然形体療法

おすすめ度:★★★★

本書は、リウマチ患者が家庭で関節リウマチを治療できるようにという目的で山田予防医術研究所の所長で自然形体療法の創始者である山田 洋(やまだ ひろし)氏によって自然形体療法の治療法が書かれたものです。

したがって、自然形体療法の施術所で行う自然形体療法の具体的な施術法に関しては掲載されていません。

免疫疾患とされる膠原病の一種である関節リウマチに関して手技療法の治療法を紹介しているという点で非常に珍しい本といえます。

本書に紹介されている自然形体療法の「自宅で出来る治療法」が関節リウマチに対してどれくらい有効なのかは不明です。

私には自然形体療法の臨床経験も指導経験もないため自然形体療法の「自宅で出来る治療法」の有効性については評価の仕様がありません。

私にとって本書に価値があったのは関節リウマチの原因説(原因論)です。

現代西洋医学では関節リウマチは免疫異常による免疫疾患とされています。

関節の変形が生じる膠原病の一種であり、自己の免疫が主に手足の関節を侵し、これにより関節痛、関節の変形が生じる炎症性自己免疫疾患であるとされています。

ところが、山田洋氏は通説であるこの免疫異常説を否定しているのです。

山田洋氏は、関節リウマチの病因は病原菌でも免疫異常でもなく、筋肉の慢性疲労だと主張しているのです。

山田洋氏によれば、筋肉の慢性疲労が限界に達したとき、限界状況に置かれたその環境に身体の部分を適応させるため骨格や筋肉を改造し、筋肉の疲労を解消しようとするのだと言います。

破骨細胞が軟骨の不要な部分を破壊たり取り除いたりして新しい骨格を形成し、筋肉を硬直化して靱帯のように働かせているのだと言います。

つまり、関節リウマチの原因は、身体の内部環境の変化に対応して身体の各部を適応させるための合目的な「身体改造工事」であると独自の「身体改造工事説」を主張しているのです。

また、関節リウマチの痛みや熱、腫れ、症状は身体改造計画にもとづく改造工事(破壊と再生)の途中経過で発生する副次的な二次的症状だと言うのです。

そして、関節リウマチで関節部分の変形や膨大、皮膚の変色等は身体改造工事の結果だと言うのです。

関節リウマチといったら免疫の病気という通説しか知らなかった私には山田洋氏の「身体改造工事説」という独自の見解まさに青天の霹靂でした。

山田洋氏の「身体改造工事説」が正しいか間違っているのかは別にして、免疫説や病原説以外の説があるなどと考えたことがなかったからです。

山田洋氏の「身体改造工事説」を前提にするなら、関節リウマチは決して病気ではなく単なる体内環境に適応するための生理的な反応であり正常な生理現象ということになります。

免疫説や病原説を前提にするなら手技療法よりも現代西洋医学による薬物療法のほうが優先するのではないかと考えてしまいます。

手技療法はかろうじて現代西洋医学の運動療法と比較できる程度の有効性が認められるくらいではないかと考えるのが妥当だということになってしまいます。

つまり、免疫説や病原説を前提にする限り、手技療法の効果は現代西洋医学の運動療法の有効性の域を超えるものではないと考えるのが当然ということになります。

ところが、山田洋氏の「身体改造工事説」を前提にすると、関節リウマチに対する手技療法の可能性が大きく広がることになります。

「身体改造工事説」は、患者さんにとっては手技療法という新しい選択肢が増える可能性が出て来ます。

山田洋氏は「身体改造工事説」の発症原因を筋肉疲労としています。

ではなぜ筋肉の慢性疲労が起こるのかについては何も言及されていません。

力学整体ではこの筋肉の慢性疲労を起こす原因は筋肉系の収縮ということになります。

単なる筋肉の慢性疲労と違って、筋肉系の収縮は関節部分に収縮力という物理的な力が作用します。

筋肉系の収縮は関節部分に圧迫する力が働きます。

したがって、関節リウマチでは身体改造工事だけでなく、筋肉系の収縮力(圧力)によって関節部の摩滅・破壊・変形も起きているのかもしれません。

力学整体はそうした関節リウマチの反応や変化にも何らかの有効性があるかもしれないという可能性を切り開いてくれるかもしれません。

ところで、たとえ理論や学説が仮説として成り立ったとしても、問題は臨床上の結果です。

本書では、リウマチの症例と体験談と闘病記がいくつか紹介されていて、それらが事実だとすると自然形体療法の有効性は認められると言えるかもしれません。

しかし、紹介されている数が数例にしか過ぎないため、リウマチに対して自然形体療法がどこまで有効なのかは把握できません。

客観的な評価に堪えるだけの症例としては不足しているからです。

本書で山田洋氏は自然形体療法だけをやれっていればリウマチは治ると言っています。

だから、リウマチの治療として薬物療法は必要ないし、むしろ薬は中止すべきだとも言っています。

たとえ良好な結果を得られた症例がいくつかあったとしても、果たして山田洋氏のように断言したり言い切ることができるのであろうかという疑問は残ります。

過去に岡山県のリウマチ専門医が関節リウマチに礒谷療法(礒谷式力学療法)が効果があると紹介されたと言って力学整体研究所のほうへ患者さんがいらっしゃったことがあります。

その医師がどのように考えて関節リウマチに礒谷療法(礒谷式力学療法)が良いと言われたのかはわかりません。

現状は関節リウマチの患者さんが治療のため整体院へ来院する場合は少ないと推測され、力学整体でも関節リウマチの症例数が少ないためその有効性に関しては何とも言えません。

それでも、現代西洋医学の通説に果敢に挑む山田洋氏の「身体改造工事説」はリウマチ理論と学説に一石を投じる見解であり一考に値する意見ではないかと考えます。

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