側弯症関連本
- 大塚 乙衛 (著), 青木 晴彦 (監修) 『側弯症は治る! (3500人のゆがみが取れた驚異のエクササイズ)』(マキノ出版)
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おすすめ度:★★★★
本書の存在は発売日の2013年10月15日からさほど日にちが経っていない昨年に知りました。
公的な有資格者である医師ではなく、民間の整体師が「側弯症(脊柱側弯症)」という病気について書いている珍しい本だということで私も興味を持ち、力学整体の施術と指導は側弯症も対象になることもあって参考のため機会があればいつか読むつもりでいました。
2014年5月に力学整体研究所のほうへ新しく側弯症の患者さんが来所されたことがきっかけで、本書を読むことになったものです。
著者は、大塚整体治療院の院長である大塚 乙衛(おおつか いつえ)氏です。
本書は、脊柱側弯症(脊椎側弯症)に関する考察と、木型と装具による整体施術の紹介、側弯エクササイズという体操(運動療法)の写真と説明、医師(整形外科医)による病気の解説、体験者の手記からなっています。
民間の整体師が「側弯症(特発性脊柱側弯症)」の理論と矯正治療の実践に関してくわしく書いている稀有な点が本書の大きな特徴となっています。
その点で、私は著者の大塚乙衛氏に敬意を表したいと思います。
大塚乙衛氏は、医学以外にも「側弯症」の矯正治療に有効な方法があることを書籍を通じて「側弯症(特発性脊柱側弯症)」の患者さんやそのご家族、一般の読者に知らせるという貢献をした先駆者と言えるからです。
医師でもない一介の整体師が「側弯症」に関する本を出すことはかなり勇気の要ることだったろうと推察されます。
しかも、医学が手術や装具以外の保存療法に手をこまねいている現状にあって、医学的な治療法の問題点を批判し、側弯症(特発性脊柱側弯症)対策としてご自身が編み出した側弯エクササイズと木型と装具を紹介しています。
そういう意味で、本書の存在意義は大きいと言えます。
大塚乙衛氏は、ある側弯症の患者さんが来院したことがきっかけで、その患者さんを何とかしてあげたいという思いから側弯症の研究に取り組まざるを得なくなります。
大塚乙衛氏は、その患者さんと二人三脚で側弯症の矯正治療に取り組み好結果を得ます。
その後、その結果を聞いた側弯症の患者さんたちが大塚整体治療院へ来院するようになります。
側弯症専門治療院となった大塚整体治療院は3,500人もの臨床例の実績を積むまでになります。
大塚乙衛氏は医学以外にも民間の整体が側弯症にも有効であることを実績を積むことで証明していったのです。
大塚乙衛氏は医学以外の各種療法(代替医学・代替医療・代替療法・民間療法)によって側弯症(特発性脊柱側弯症)の矯正治療への道を切り開いたのです。
大塚乙衛氏は各種療法(代替医学・代替医療・代替療法・民間療法)が側弯症(特発性脊柱側弯症)の矯正治療への第一歩を踏み出す足跡を残したと言えます。
大塚乙衛氏による医学(整形外科)における側弯症治療の問題点に対する批判は妥当なものと思われ、私も賛同します。
ただ、礒谷療法師と力学整体師という私の立場からは、大塚乙衛氏の側弯症の原因に対する仮説と具体的な矯正治療法に関して2、3の疑問が残りました。
大塚乙衛氏は側弯症の原因を重力に抵抗して体を地面に立たせている抗重力筋である体を支えている体幹筋(腹直筋・腹横筋・広背筋・脊柱起立筋など)の協調性が失われて筋肉が伸びたり縮んだりしてバランスよく働いていない状態にあるとしています。
さらに、筋肉がバランスよく働いていない原因には筋肉の衰えがあるとしています。
そのため、側湾症改善大塚式RHPI療法では、体幹筋が協調性をもって筋肉が伸びたり縮んだりしてバランスよく働けるように体幹筋の伸ばす体操やストレッチ、そして筋肉の衰えを改善するために筋トレを含めた側弯エクササイズを行うということです。
側弯症の原因として筋肉が大きく関わっていることは力学整体でも同感です。
しかし、体幹筋(腹直筋・腹横筋・広背筋・脊柱起立筋など)の協調性が失われて筋肉が伸びたり縮んだりしてバランスよく働いていないのは、筋肉が衰えているからではなく、筋肉が活発に働いて体幹筋が収縮しているからだと力学整体では考えています。
実は、力学整体では筋肉が慢性的に収縮している場合、体操やストレッチで筋肉を伸ばしたり、筋トレで筋肉に負荷をかけたりすると、筋肉は収縮の度合を強くする現象を確認しています。
したがって、側弯エクササイズによって筋肉の収縮状態を悪化しかねない場合もあるのではないかと考えられます。
また、木型や装具療法、側弯エクササイズで体形のゆがみを改善でき、外見は身体が真っ直ぐなったとしても、体内での筋肉の収縮状態は悪化しないのかという疑問が残るのではないかと考えています。
もっとも、これは矯正治療後の患者さんのその後の追跡調査を行わないとハッキリしたことは何とも申し上げられません。
それに、本書では木型と装具に関しては簡単な紹介に止まっているので、それらに関して深くは考察できません。
礒谷療法師と力学整体師の立場からは、本書に掲載されている側弯エクササイズの中のリラックス体操の全部即ち「ひざ抱え体操」「腰伸ばし体操」「正座であおむけ体操」と、ドリル体操の「屈伸体操」が、あまりにも礒谷療法(礒谷式力学療法)の施術法と自宅矯正法に類似というか酷似していることに驚かされました。
側弯エクササイズの中のリラックス体操の「ひざ抱え体操」「腰伸ばし体操」とドリル体操の「屈伸体操」は礒谷療法(礒谷式力学療法)の自宅矯正法と全く同じであり、リラックス体操の「正座であおむけ体操」は礒谷療法(礒谷式力学療法)の施術法と同一です。
側弯エクササイズのリラックス体操の全部とドリル体操の「屈伸体操」は紛れもなく礒谷療法(礒谷式力学療法)の施術法と自宅矯正法です。
側弯エクササイズは礒谷療法(礒谷式力学療法)の施術法と自宅矯正法を取り入れているということです。
大塚乙衛氏が側弯エクササイズに礒谷療法(礒谷式力学療法)を取り入れていることは、側弯症に礒谷療法(礒谷式力学療法)と力学整体が有効であることを認め傍証してくださっていることにはなります。
問題はそこではありません。
側弯エクササイズに採用されている礒谷療法(礒谷式力学療法)の施術法と自宅矯正法は股関節の角度を考慮していないということが大きな問題なのです。
側弯エクササイズは礒谷療法(礒谷式力学療法)の施術法と自宅矯正法は、すべて礒谷療法(礒谷式力学療法)のS型で行っているのです。
礒谷療法(礒谷式力学療法)の臨床経験を持つ者であるならば、本人の股関節の転位に合わせた角度で施術法と自宅矯正法を実行すれば、それは矯正ではなく体形をゆがませたり体調を悪化させてしまうこともある矯悪になってしまうことは礒谷療法師なら既知の事実です。
したがって、本人の股関節の角度を考慮することなく、側弯エクササイズの中の礒谷療法(礒谷式力学療法)の施術法と自宅矯正法を実行することは危険であるとさえ言えます。
大塚乙衛氏は側弯エクササイズに礒谷療法(礒谷式力学療法)の施術法と自宅矯正法を取り入れながら、礒谷療法(礒谷式力学療法)の知識と経験はなかったのでしょうか。
もし礒谷療法(礒谷式力学療法)の知識があるとするならば、その人に応じてその人に合った角度で側弯エクササイズを実行するように説明していないのは患者さんに対して無責任の謗りを免れないのではないでしょうか。
もし礒谷療法(礒谷式力学療法)の知識がないとするならば、勉強不足としか言いようがありませんし、その危険性の認識もなく知らないで安易に取り入れていることになり、これまた患者さんに対して無責任の謗りを免れないのではないでしょうか。
側弯エクササイズに礒谷療法(礒谷式力学療法)を取り入れるのであれば、正しく取り入れるべきですし、正しく運用すべきです。
本書には私も参考になるところが多かっただけにその点が非常に残念でした。
それと、側湾症改善大塚式RHPI療法を受けた患者さんの全員が側弯症が完治したわけではなく、改善しただけの症例やうまくいかなかった症例もあることでしょうから、本書の「側弯症は治る」という書名(タイトル)や本書の中の「側弯症は治る」との文章は過剰表現であり誇大広告になってしまいかねないのではないでしょうか。
それでも、私は大塚整体治療院の院長である大塚乙衛氏の側弯エクササイズや木型、装具療法などの側湾症改善大塚式RHPI療法と本書を高く評価したいと思います。
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